平均センチポーン差(ACPL: average centipawn loss)とは何か?【チェス用語】

Lichessなどでチェスを指した後、対局内容をコンピューターに解析してもらう人は多いでしょう。
そのとき、「平均センチポーン差」という言葉を目にしますよね。
本記事では、この言葉の意味についてお伝えします。
平均センチポーン差(ACPL: average centipawn loss)とは?
平均センチポーン差とは、”コンピュータの考える最善手”と”実際に人間が指した手”の評価値の差を表す指標の平均値です。
この平均センチポーン差の値が小さいと、「最善手をたくさん指していて悪い手が少なかった」という意味になります。
反対に、平均センチポーン差の値が大きいと、「最善手から外れた手をたくさん指していて悪い手が多かった」という意味になります。

超簡単に一言でいえば、「平均センチポーン差が低かったらミスが少なく指せていたよ」という意味で受け取ってください。
平均センチポーン差についてもっと知りたい人は、以下の文章を読み進めてください。
センチポーンについて理解しよう
平均センチポーン差を理解するためには、先に「センチポーン差」について理解する必要があります。
しかし、センチポーン差を理解する前に、「センチポーン」という言葉について理解する必要があるでしょう。
まず、センチポーンとは、ポーンの価値の100分の1を示す単位です。
- 1センチメートルを百倍すると1メートル
- 1センチポーンを百倍すると1ポーン
このセンチポーンは、ポーン1個よりも小さな優劣を測るのに使われます。
たとえば、コンピューターがある局面を+0.25と評価したとします。
この+0.25は、白が25センチポーン分(つまりポーンの4分の1分)の優勢であるという意味です。
反対に-0.25は、黒が25センチポーン分(つまりポーンの4分の1分)の優勢であるという意味になります。
センチポーン差について理解しよう
センチポーン差とは、「コンピューターが考えた最善手」と「実際に人間が指した手」によって生まれる優劣の差をセンチポーンで示したものです。
たとえば、
- コンピューターの考えた最善手:0センチポーン
- コンピューターの考えた緩手:50センチポーン
- コンピューターの考えた悪手:100センチポーン
- コンピューターの考えた大悪手:300センチポーン
とします。(参考:lichess.org What is average centipawn)
この例の場合、プレイヤーが緩手を指した場合、センチポーン差は50になります。



最善手=0センチポーン。
緩手=50センチポーン。
その差は50センチポーン。
これがセンチポーン差です
つまり平均センチポーン差とは、センチポーン差の平均値
ここまで読んだ人は、平均センチポーン差についてスムーズに理解できるでしょう。
平均センチポーン差は、すべての手で生じたセンチポーン差を合計して平均したものです。
以下の例をご覧ください。
例:10手指したときの平均センチポーン差について
- 1手目のセンチポーン差:0(最善手)
- 2手目のセンチポーン差:0(最善手)
- 3手目のセンチポーン差:0(最善手)
- 4手目のセンチポーン差:0(最善手)
- 5手目のセンチポーン差:0(最善手)
- 6手目のセンチポーン差:50(緩手)
- 7手目のセンチポーン差:0(最善手)
- 8手目のセンチポーン差:100(悪手)
- 9手目のセンチポーン差:0(最善手)
- 10手目のセンチポーン差:0(最善手)
10手のセンチポーン差の合計は150。平均すると15(150÷10)になります。
つまり、平均センチポーン差は15となります。
悪い手を指すごとに、センチポーン差は大きくなります。
また、悪い手を指すごとに、平均センチポーン差は大きくなります。
そのため、平均センチポーン差が小さいほど「最善手をたくさん指していて悪い手が少なかった」という意味になるでしょう。
平均センチポーン差の値についての解釈
以下に、平均センチポーン差の値についての個人的な解釈を書きます。
- 平均センチポーン差が10以下:かなり正確な手を指し続けた試合だった。
- 平均センチポーン差が10~20:正確な手が多い試合だった。
- 平均センチポーン差が20~30:比較的に正確な手を指し続けた試合だった。
- 平均センチポーン差が30~50:いくつかミスが目立つ試合だった。
- 平均センチポーン差が50~100:ミスが結構多い試合だった。
- 平均センチポーン差が100以上:ミスがとにかく多い試合だった。
平均センチポーン差の値が大きい場合、ミスの数が多いため、見直すと得られるものが多いでしょう。
平均センチポーン差を気にしすぎる必要はない
ここまで平均センチポーン差について詳しくお伝えしてきました。
しかし、平均センチポーン差について過度に気にしすぎる必要はありません。
たとえば、初心者のころに平均センチポーン差が30で、中級者になってから平均センチポーン差が40だったとします。
平均センチポーン差の値だけ見ると、初心者のころよりも正確な手を指せていない、つまり下手になったように見えます。
しかし、実際には中級者になったことで、相手のレベルが上がり、初心者のころよりも難しい局面が増えただけなのです。
平均センチポーン差は難しい局面が多かったり、持ち時間が少ないルールだったりすると、値が大きくなってしまうものです。
また、平均センチポーン差は、プレイヤー同士の実力差によっても変動しやすいです。
自分よりも格上のプレイヤーと対戦すると、平均センチポーン差は大きくなりやすいでしょう。



それから、攻撃的なスタイルのプレイヤーは平均センチポーン差が大きい印象があります。
結局のところ、平均センチポーン差はあくまで指し手の精度を測る一つの指標に過ぎません。
チェスの魅力は、戦略や発想や創造力など、数値では表せないものがたくさんあります。
平均センチポーン差にとらわれすぎると、チェスの楽しさを見失ってしまうかもしれません。
自分のスタイルや目標に合わせて、平均センチポーン差を参考にする程度にしておくのが良いと思います。
- Chess.com Forums:Analysis: average centipawn loss and graph
- Lichess:Lichess Accuracy metric
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