クイーンズギャンビットの概要|メリット・デメリット・バリエーション
クイーンズギャンビットは、「初手:d4 d5」に対してc4と指すチェスのオープニングです。
このオープニングの名前は、2020年にネットフリックスで配信されたドラマのタイトルになっています。
そのため、チェスに詳しくない人でも『クイーンズギャンビット』というフレーズを耳にしたことがあるかもしれません。

クイーンズギャンビットは、非常に優秀なオープニングの1つです。
- 序盤戦は中央を支配するために指すので、理論や原則に従うオープニング。
- 初心者や中級者でも理解しやすいオープニング。
- 有名なオープニングのため、相手が対応になれている可能性が高い。
クイーンズギャンビットが使用された試合
クイーンズギャンビットが使用された試合を見ていきましょう。
以下は、1997年に行われた対戦です。
白のガルリ・カスパロフは、長い期間チェスの世界チャンピオンとして活躍した伝説的なプレイヤーです。
黒のエフゲニー・ピグソフは、1970年代から1990年代に活躍したロシア出身のグランドマスターです。



出た!僕が好きなオープニングのクイーンズギャンビットだ!



クイーンズギャンビットは、全オープニングの中でも愛用者が特に多いオープニングだよね。プロの試合でもよく見かけるオープニングだし、初心者の試合でも結構見かけるオープニングだ。



昔からずっと人気だよね!この試合では、クイーンズギャンビットに対して、スラブディフェンスじゃなくてディクラインドが選択されたのね。



そう、クイーンズギャンビットに対する一番人気の黒の指し手は「c6」と指すスラブディフェンス。2番目に人気があるのは「e6」と指すディクラインドだよね。



この試合でカスパロフが勝てた要因はなにかな?



大きく2つ挙げられるかな。1つ目はa8のルークを動かしていないから、あまり活躍できていないよね。2つ目は「29手目のQe7」という手が悪かっただ。e7にクイーンを動かしても、Rf6からの攻めに対してクイーンが活躍できなかったから良い手ではなかったね。例えば、29手目にQa3と指していれば、白はクイーンを動かすと、d3のビショップが取られてしまう状況になります。



Rf6に対して「gxf6」とポーンで取る手はダメだったの?



「gxf6」はダメだね。1手でチェックメイトされてしまうよ。gポーンがいなくなったことで、hポーンが弱点になってしまうからね。
黒が「gxf6」と指すと…
1手でチェックメイトされる。
クイーンズギャンビットのバリエーション
クイーンズギャンビットのバリエーションをいくつかご紹介します。
スラブディフェンス(Slav Defense)
スラブディフェンスは、クイーンズギャンビットに対し、最も選択されるオープニングです。
白がc4と指してd5にプレッシャーをかけるのがクイーンズギャンビットですが、スラブディフェンスはc6と指してd5を支えます。
このc5という手によって、黒はポーン構造が悪くなることがありません。
ただ、一時的にナイトをc6に展開できなくなる点は、スラブディフェンスの悪い点です。
このオープニングが使用された試合
クイーンズ ギャンビット アクセプテッド
クイーンズギャンビットに対して、「ギャンビットを受け入れる」という選択を黒がした場合は「クイーンズ ギャンビット アクセプテッド」になります。



ちなみに、ギャンビットを受け入れるとは、相手がギャンビット(犠牲)を提案したときに、その駒を取ることを意味します。
例えばクイーンズギャンビットの場合、白がc4に指したポーンは「タダ取りされる駒」に該当します。
序盤戦でポーンを犠牲にする手こそ、ギャンビットです。
c4ポーンを犠牲にする代わりに、ポーンよりも強い駒を展開する狙いがあります。
クイーンズ ギャンビット アクセプテッドでは、以下のように試合が進むことが多いです。
このように、序盤でポーンを犠牲にしますが、Bc4という手でポーンを取り返します。
黒はb5などの手を指せば、一時的にc4ポーンを守れますが、あまり良い展開にはなりません。
そのため、黒番は基本的にc4ポーンをBc4で取られる展開を受け入れます。
このオープニングが使用された試合
クイーンズ ギャンビット ディクラインド
カスパロフとピグソフの試合で使用されていたのが、このクイーンズ ギャンビット ディクラインドです。
先ほどの「アクセプテッド(Accepted)」では、dxc4と指してギャンビットを受け入れていました。
それに対して、「ディクラインド(Declined)」では、e3と指してギャンビットを辞退します。
そして、クイーンズギャンビットの場合、ギャンビットを辞退するディクラインドのほうが多くのバリエーションが存在します。
このe6と指してギャンビットを辞退する手は、一番シンプルでベーシックなディクラインドの展開です。
スラブディフェンスの次に人気があり、初心者から上級者までレベルに関係なく指されるオープニングです。
このオープニングが使用された試合
クイーンズギャンビット(Queen’s Gambit)のECOコードは「D06-D69」です。この中には、スラブ・ディフェンス(D10-D15)やチゴリン・ディフェンス(D07-D09)なども含まれています。
コメント