ポーンエンディングとは?オポジションやスクエアについて理解しよう!

チェスの終盤戦の目的は、「ポーンを昇格させてクイーンを作ること」です。
当然ながらポーンを昇格させなくても、チェックメイトを狙うことはできます。
しかし、駒の交換が進んだ終盤戦においては、ポーンの昇格無しでチェックメイトを狙うことは困難です。
そのため、多くの試合で終盤戦になると、ポーンを昇格させてクイーンを作ることが目標になります。
そして、ポーンを昇格させてクイーンを作るためには、さまざまな知識を持っていたほうが素早く正確な手を指せます。
本記事では、キングの他にポーンしか存在しない終盤戦、つまり「ポーンエンディング」の解説を行います。

「スクエア」「オポジション」「キースクエア」などの考え方がよく分からない人は、ぜひ参考にしてください!


ポーンエンディングのポイント1:スクエアを理解する
まず、
- 自分の駒:「キング」と「ポーン1つ」。
- 相手の駒:「キング」だけ。
という状況について考えてみましょう。
例えば、以下の局面をご覧ください。
この局面では、白のプレイヤーが手番だとします。
そして質問です。
白のプレイヤーはキングの助けなしでポーンを昇格(プロモーション)できますか?
この質問に対して、すぐに答えを回答できる人は「スクエア」というポーンエンディングの知識があるのだと思います。
反対に、頭の中で駒を動かし、ポーンを昇格できるか考えた人は「スクエア」を知らないのだと思います。



スクエアってなんなの?



スクエアについて、以下で解説していくよ!
もう一度、以下の局面をご覧ください。
緑色の矢印で「スクエア(正方形)」を描いて、スクエアの角にポーンを置きました。
そして、ポーンを動かすときに、
- スクエアの中に敵のキングが入っていない=ポーンだけで昇格できる。
- スクエアの中に敵のキングが入っている=ポーンだけでは昇格を防がれる。
というエンドゲームの考え方が存在します。
この考え方を踏まえて、もう一度だけ以下の局面を見てみましょう。
この局面では、手番の白がポーンを動かすときに、敵のキングがスクエアに入っていません。
そのため、瞬時に「ポーンを動かすだけで昇格できる」と判断できます。
実際に駒を動かして確認する。
この局面で、手番が白ではなく、黒だった場合も見ていきましょう。
手番が黒の場合は、黒のキングはスクエアの中に侵入できます。
実際に駒を動かして確認する。
このように、ポーンを動かす前に、正方形をイメージして、ポーンだけ動かして昇格できるかどうかを判断する考え方を「スクエア」といいます。



これが「スクエア」って考え方か!
スクエアの練習問題
以下の局面で、手番は白番のあなたです。
白番のあなたはどんな手を指しますか?
答えを見る
この局面の最適手は、ポーンを「a4」に動かす手です。
白はh1のキングを動かさずに、a2のポーンを昇格させることが可能です。
ポーンを動かす前はスクエアに入られています。
つまり、一見すると白のキングが昇格を助ける必要があります。
しかし、ポーンが初期マスにいる場合は、話が別になります。
ポーンを2マス動かしたときのスクエア。
ポーンを2マス動かすと、スクエアは上記のようになります。
つまり、黒のキングがf8に動いても、次に白のポーンが動くときに、スクエアの中に黒のキングが入っていません。
「ポーンが初期マスにある」という少し意地悪な問題ですが、この問題もスクエアを使って考えると楽に解けます。
実戦で役立ててください。
ポーンエンディングのポイント2:オポジションについて理解する
スクエアの次は「オポジション」についても理解しましょう。



オポジション…?



そう、オポジション(opposition)といいます。
まず、オポジションとは、自分のキングと相手のキングが向き合った状況のことです。
オポジションの例
このようなオポジションになると、どちらのキングも前に進むことができません。
そして、オポジションの状態で、手番になったプレイヤーは不利になります。
なぜなら、手番のプレイヤーはキングを前進できず、後ろに動くことを強制させられるからです。



オポジションの状態で、手番を渡すことを『オポジションを取る』といいます。
キングとポーンしかいない終盤戦では、この『オポジションを取る』という考え方が非常に重要になります。
オポジションを取る重要性を理解するために、以下の局面をご覧ください。
この局面で最適手は何だと思いますか?



正解は「Kd7」という手です。
キングをd7に移動させると、白のプレイヤーはオポジションを取ることができます。
手番を渡された黒のプレイヤーは、手番をパスできないので、キングを動かす必要があります。
しかし、黒のプレイヤーがキングを動かすと、白番にポーンを取られてしまうのです。
オポジションを取られた黒は、
キングを動かすしか手がないが…
キングを動かすと、
このようにポーンを取られる。
このように、オポジションで手番を渡された黒のプレイヤーは、不利な手を強制させられています。
ちなみに、相手に不利な手を強制させることを「ツークツワンク(Zugzwang)」といいます。
チェスの本を読んでいると、このツークツワンクという単語が出てくることがありますので、覚えておいて損はありません。
オポジションの練習問題
以下の局面で、手番は白番のあなたです。
白番のあなたはどんな手を指しますか?
答えを見る
この局面の最適手は、「Kd5」です。
このKd5という手を指すと、白のプレイヤーはオポジションを取れます。
オポジションを取られた黒は、キングを前進させたくても白のキングに邪魔されてしまいます。
こうなると、黒のプレイヤーが指せる手は「Ke7」といった手です。
(キングを後ろに下げても不利になるため。)
それに対して、白は「Ke5」と指して、もう一度オポジションを取ります。
そうすると、黒のキングはまた前に進むことができません。
そのため、黒のプレイヤーはKd7などと指す1手です。
ここで白のプレイヤーはキングを前進させることに成功します。
白のプレイヤーは、黒のキングと反対側のf6のマスにキングを動かせるのです。
このように、オポジションを取って相手のキングを下がらせると、自分のキングを前進させることに成功します。
次に、黒のプレイヤーがオポジションを取ろうとして、Kd6に指したとするとどうでしょうか。
一見、オポジションを取って、白のキングの動きを制限させることに成功しています。
しかし、白にはポーンをe5に突く手が残っています。
これによって、黒のキングはチェックされてしまい、さらにはオポジションの状態でキングの動ける範囲も制限されています。
この後は、以下のような手順で白がポーンの昇格に成功します。
このように、オポジションを取ることで自分のキングを前に進めることは、ポーンエンディングにおいて非常に重要です。
実戦で使用することも多くあるので、ぜひ覚えておきましょう。
ポーンエンディングのポイント3:キースクエアについて理解する
最後に、「キースクエア」についても理解しましょう。
キースクエアとは、ポーンエンディングで重要な役割を果たすマスです。
基本的には、「キースクエア=ポーンの2マス先の3マス」と覚えてください。
キースクエアの例
このポーンの2マス先の3マス、つまり緑色の丸がキースクエアになります。
そして、
- キースクエアに自分のキングが移動する=ポーンの昇格が成立する。
- キースクエアに相手のキングが侵入する=ポーンの昇格が成立しない。
というルールが存在します。
そのため、ポーンエンディングにおいて、自分のキングをいち早くキースクエアに移動させることが重要です。
自分が攻め側の場合、キースクエアに自分のキングが移動できれば、以下のようにポーンを昇格できます。
また、自分が受け側の場合、キースクエアに自分のキングを侵入できれば、以下のようにステイルメイトに持っていくことができます。
キースクエアの練習問題
以下の局面で、手番は白番のあなたです。
白番のあなたはどんな手を指しますか?



ここから白番が勝つことは不可能ですが、引き分けに持っていくことは可能です。
少し難しい問題なので、ヒントを用意しています。
ヒント
この問題は「キースクエア」の練習問題です。
この問題を解くときは、キースクエアがどこなのかをまず考えてください。
以下の緑丸のように、キースクエアはポーンの2マス先の3マスです。
そして、このキースクエアに黒のキングが移動すると、ポーンの昇格を許してしまうことになります。
それでは、どのような手を指せば、黒のキングがキースクエアに移動することを防げるのか。
この部分について考えることで、最適手を導き出すことができます。
答えを見る
答えは「Ke1」です。
正解できましたか?
これは少し難しい問題でしたよね。
白のプレイヤーがキングをe1に動かす以外の手を指すと、黒のキングがキースクエアに移動することができてしまいます。
まず、キングをe1に動かした場合、どのような展開になるのか見ていきましょう。
このように、オポジションを取ることによって、黒のキングがキースクエアに移動することを防いでいます。
それでは、他の手を指した場合、本当に黒がキースクエアに移動できるのかを見ていきましょう。
白がKd2と指した場合…
白がKd2と指してしまうと、黒のプレイヤーがオポジションを取ることができます。
そして、オポジションを取れている黒のプレイヤーは、3手目に「Kd3」でキースクエアに移動できています。
つまり、Kd2と白が指すと、引き分けに持って行けず負けてしまいます。
白がKe2と指した場合…
Ke2と指した場合も、オポジションを取れるのは黒のプレイヤーです。
オポジションを取り、キングを前進させている黒のプレイヤーは、2手目に「Kf3」でキースクエアに移動できています。
このように、「オポジションされる側」になると、キースクエアの支配で負けてしまい、ポーンの昇格を許してしまいます。
「どうすればオポジションを取り、キースクエアへの移動を阻止できるか」を考えることが重要になってきます。
まとめ
本記事では、ポーンエンディングで重要となる3つの要素について解説しました。
- スクエア
- オポジション
- キースクエア
この3つの要素を理解することで、ポーンエンディングをより楽しくプレイすることができます。
地味に見えるポーンエンディングですが、奥が深いので勉強する価値は十分にありますね。
これら3つの要素を理解しているだけでも、持ち時間の少ないエンドゲームで素早く正確な手を指せるので、ぜひ覚えてみてください。
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