チェスにおける「ピン」とは?練習問題を解いて覚えよう!

チェスにおける「ピン」とは、3つの駒が直線上にあるときに、その間にいる駒が動けなくなる状況のことを指します。
以下の局面をご覧ください。
まず、eファイル(eの縦列)に
- e1:白のルーク
- e6:黒のナイト
- e8:黒のキング
といった感じで、3つの駒が直線上に並んでいます。
このとき、e6の黒のナイトを動かせないことが分かるでしょうか。
もし、e6のナイトを動かすと、e1の白ルークでe8の黒キングを取れることになります。
黒の視点になると「ナイトを動かす=キングを取られる」という状況になり、実際の試合でこの状態になったら、e6のナイトを動かすことができません。
このように、3つの駒が直線上に並んだ局面で、「その間にいる駒が動かせなくなる状況」をピン(釘付け)といいます。
ピンは2種類ある
チェスにおけるピンについて、なんとなく理解できた人が多いと思います。
次に「ピンの種類」について理解していきましょう。

ピンに種類あるの!?



そう、2種類のピンがあるからしっかりと理解しておこう。
- 絶対ピン(Absolute Pin)
- 相対ピン(Relative Pin)
1.絶対ピン(Absolute Pin)
まず、絶対ピンから解説していきます。
絶対ピンとは、ピンされた駒を絶対に動かせないピンの種類です。
つまり、記事の冒頭で説明したピンは絶対ピンです。
例として、以下の局面をご覧ください。
この局面では、c6の黒ナイトを動かすことができません。
なぜなら、b5のビショップによってピンされています。
そして、ナイトの後ろにはキングがいるため、これは「絶対ピン」です。
要するに、ピンされた駒の後ろにキングがいるときは絶対ピンであり、ピンされた駒を絶対に動かすことができません。
相対ピン(Relative Pin)
次に相対ピンを解説します。
相対ピンは絶対ピンとは違い、ピンされた駒を動かせるピンの種類です。
ただし、その後ろにいる駒が取られることを避けるため、実質的に動けないことがほとんどです。
例として、以下の局面をご覧ください。
この局面でピンされている駒は、d7の黒のナイトです。
もし、d7のナイトを動かすと、d8のクイーンがd1のルークに取られてしまいます。
d7のナイトの後ろにキングがいたら、絶対ピンになりますが、この局面ではクイーンなので「相対ピン」になります。
- 絶対ピン(Absolute Pin): ピンされた駒がキングの後ろにいる場合、その駒はルール上動かすことができません。キングがチェックされる状況を避けるため、絶対ピンされた駒は移動が禁止されています。このタイプのピンは、相手のプランを破壊し、自分の利益を生み出すために利用されます。
- 相対ピン(Relative Pin): ピンされた駒が動くことは可能ですが、その後ろにいる駒が取られることを避けるため、実質的に動けない状況です。相対ピンは、戦術的な利益を生み出すために使用されます。
ピンを解除する方法
実戦では、相手から自分の駒がピンされることがよくあります。
そんなとき、「ピンを解除すること」が重要になることがあります。
ピンを解除する方法は主に2つです。
- ピンされた駒の後ろに別の駒を置く。
- ピンされた駒の後ろの駒を別のマスに動かす。
「自分の駒がピンされっぱなし」の状態だと、一瞬でピンチになることもあるので、しっかりと理解していきましょう。
①:ピンされた駒の後ろに別の駒を置く
以下の局面を見てください。
自分の駒がピンされた局面。
c3の自分のナイトが敵ビショップによってピンされています。
このピンを解除するためには、以下のような手があります。
ピンを解除する一例。
c3のナイトの後ろに「キングがある状態」では、ピンが有効な状態です。
しかし、このようにd2にビショップを置くことで、ナイトの後ろにある駒は「ビショップ」になります。
b2の敵ビショップとd2の自分のビショップは、駒の価値が同じであるため、この局面はピンではありません。
なぜなら、以下のようにc3のナイトを動かしても、「ビショップとビショップ」の交換になるだけだからです。
もし、クイーンをd2に動かしていた場合は、ピンを解除できていないので注意してください。
②:ピンされた駒の後ろの駒を別のマスに動かす
以下の局面を見てください。
この局面では、f3のナイトがピンされています。
もし、この局面のままf3のナイトを動かすと、d1のクイーンを取られてしまいます。
整理すると、
- ピンされている駒:f3のナイト
- ピンされている駒の後ろの駒:d1のクイーン
という状況です。
ここで、d1のクイーンをa4に動かすと、ピンを解除することができます。
ピンされている駒の後ろの駒を動かすことで、ピンを解除することができます。
ピンするメリットは何か
チェスでピンを狙うメリットは以下のとおりです。
- 相手の駒の動きを制限する。
- タクティクスを準備できる。
①:相手の駒の動きを制限する
相対ピンの場合、ピンされた駒を動かすと、その後ろにある価値の高い駒を取られることになります。
また、絶対ピンの場合は、そもそもピンされた駒をルール上動かせないです。
つまり、相対ピンであっても、絶対ピンであってもピンされた駒の動きを制限することができます。
また、相手はピンを解除するための1手を指さなければいけないことがあり、陣形を悪くしたり、無駄な手を指させる効果もあります。
②:タクティクスを準備できる
ピンすると、相手の駒の動きを制限できます。
それによって、ピンを起点にしたタクティクスを準備することができます。
例えば、以下の局面をご覧ください。
この局面では、c6のナイトをc1のルークでピンしています。
ここで重要なのは、ピンされているc6のナイトが多くの駒に攻撃されている点です。
このように3つの駒(ビショップ・ルーク・ナイト)から攻撃されていますね。
これは、ピンした駒(c6のナイト)を集中砲火することで、この局面では駒得を狙うテクニックです。
黒番は集中砲火される前に、キングをb8に動かしてピンを解除するべきでした。
ちなみに、この局面では以下のような手順で分かりやすく駒得になります。
黒番がキングをb8に動かなかった場合は、もっと大きな駒得を白番は狙えたでしょう。
ピンされた駒は動きが制限されているため、その間にさらなる攻撃やタクティクスを準備することができるでしょう。
ピンの練習問題【どうすればピンを作れる?】
それでは、実際にピンの練習問題を解いてみましょう。
これから、ある局面を用意しますので、「ピンを使った最適手」を探してみてください。
練習問題①
以下の局面で、手番は白番のあなたです。
白番のあなたはどんな手を指しますか?
練習問題①のヒント
この局面の最善手は、「ピンを作ること」です。
この局面で、どうやってピンを作るかを考えてみてください。
練習問題①の答え
答えは「Re1」です。
ルークをe1に置くことで、e6にいる相手のナイトをピンできます。
もし、e6のナイトを動かした場合、e1のルークでe8のルークを取ることが可能です。
e6のナイトを動かすと…
e1のルークでe8のルークを取れる。
そのため、この局面では黒番はe6のナイトを動かすことができません。
そして、e6のナイトを守る手が黒番にはないため、白のあなたが駒得できます。
参考:黒番の最善手
この局面で、黒番の最善手はナイトを諦めて、d4にビショップでポーンを取る一手です。
その後、白番はg5のナイトで黒番のナイトを取れます。
答えのRe1という手は、ピンを上手く使用した駒得といえるでしょう。
練習問題②
以下の局面で、手番は白番のあなたです。
白番のあなたはどんな手を指しますか?
練習問題②のヒント
この局面では、白の「b4のクイーン」と「d4のナイト」をポーンに同時攻撃されています。
この局面で、白番が「クイーンを取られたくない」と考えて、Qb3などと指すと駒損してしまいます。
白番かQb3と指すと…
ナイトを取られて駒損してしまう。
つまり、単純な手を指すのではなく、テクニカルな1手が必要になります。
例えば、「ピンを作る」とか…。



ある駒を動かすと、ピンが出来上がりますね…?
練習問題②の答え
答えは「Nxb5」です。
d4にいる自分のナイトを動かすことで、c5のポーンをピンにできます。
もし、黒番のプレイヤーがc5のポーンでb4のクイーンを取ると、f1のビショップでb6の黒クイーンを取ることができます。
c5のポーンでb4の白クイーンを取ると…
f2のビショップでb6の黒クイーンを取れる。
その後の黒番と白番の最善手は以下で確認してください。
「自分の駒を動かしてピンを作る」という点を理解してほしかったので、この練習問題を作りました。
あまり多くないピンの使い方ですが、頭の片隅に残しておいてください!
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