[チェス用語]キャスリングとは?具体的な条件やメリットを解説

チェスにおけるキャスリング(Castling)とは、チェスのルールの1つであり、
- キング
- ルーク
の2つの駒を1手で同時に動かすことを意味します。
キャスリングの例
まずは、キャスリングの例をご紹介します。
なお、キャスリングには、
- キングサイドキャスリング(King-side Castling)
- クイーンサイドキャスリング(Queen-side Castling)
の2種類があります。
キングサイドキャスリングの例
キングサイドキャスリングの例
「4.O-O」にて、白のキングとルーク(キング側)が同時に動いていることが分かるでしょうか。
このように、キング側のルークとキャスリングすることを『キングサイド キャスリング』と呼びます。
キングサイドキャスリングは、早い段階でキングを安全な位置に移動させることができます。また、ルークを有効な位置に配置できるため、初心者から上級者まで幅広く用いられます。
クイーンサイドキャスリングの例
キングサイド キャスリングがあるならば、『クイーンサイドキャスリング』も存在します。
クイーンサイドキャスリングの例
「5.O-O-O」にて、白のキングとルーク(クイーン側)が同時に動いていることが分かるでしょうか。
このように、クイーン側のルークとキャスリングすることを『クイーンサイド キャスリング』と呼びます。
クイーンサイドキャスリングは、キングサイドキャスリングに比べて、動かさなければいけない駒が1つ多いです。そのため、キングサイドキャスリングより敵から攻撃されるリスクが高いです。しかし、クイーン側のルークを有効な位置に配置できるため、状況によっては有効な1手になりえます。
キャスリングの条件
キャスリングするためには、以下の条件を満たす必要があります。
- キングとルークを初期位置から一度も動かしていないこと。
- キングがチェックされていないこと。
- キングとルークの間に、他の駒が存在していないこと。
- キングがキャスリングする先の2マスが、敵の駒の攻撃範囲に含まれていないこと。
なんとなくイメージできるかもしれませんが、1つずつ説明しますね。
キングとルークを初期位置から一度も動かしていないこと
まず、キャスリングをしたいなら、キングとルークを初期位置から動かしてはいけません。
キングとルークを初期位置から動かした時点で、キャスリングができなくなります。
例:キングを初期位置から動かす
上記の例のように、キングを初期位置から動かすと、次の手で初期位置にキングを戻しても、キャスリングはできません。
キングがチェックされていないこと
次に、キングがチェック(将棋でいう王手)されているときは、キャスリングができません。
例:チェックされているとき
上記の例のように、クイーン[a5]によってキングがチェックされているときは、キャスリングができません。
キャスリングしたいなら、チェックを回避してから行いましょう。
例:チェックを回避すれば、キャスリングできる
※ナイト[c3]によって、クイーンのチェックを防いでいます。
キングとルークの間に、他の駒が存在していないこと
キングとルークの間に、他の駒が存在しているときは、キャスリングできません。
例:白ビショップ[f1]が邪魔でキャスリングできない
上記の例では、ビショップ[f1]を展開(有効なマスに動かすこと)すれば、キングとルークの間に他の駒が存在しなくなりますね。
キャスリングしたいなら、キングとルークの間にある駒は別のマスに移動させましょう。
キングがキャスリングする先の2マスが、敵の駒の攻撃範囲に含まれていないこと
最後に、チェスの上級者でもうっかり見落としがちな条件があります。
それは、「キングがキャスリングする先の2マスが、敵の駒の攻撃範囲に含まれていないこと」です。
例:敵のビショップによってキャスリングを妨害されている
上記の例では、敵のビショップ[a6]がキャスリング先の[f1]を攻撃しているため、キャスリングができません。
具体的にまとめると、
- キングサイドキャスリングのときは、[f1]と[g1]のマスが敵の駒から攻撃されているとダメ。
- クイーンサイドキャスリングのときは、[d1]と[c1]のマスが敵の駒から攻撃されているとダメ。
ということがいえるでしょう。
例:これらのマスが攻撃されているとキャスリングできない
ポイントとなるのは、「キャスリングする先の2マス」という点です。
例:[b3]を攻撃されていてもキャスリングできる
例では、敵のナイト[a3]と敵のルーク[b8]が[b1]を攻撃していますが、白番はクイーンサイドキャスリングを行えます。
オンライン対戦であれば、「キャスリングができるできない」は簡単に分かるのですが…。オフラインでチェスの対局をすると、うっかり見落としてしまうポイントなので注意してください。
キャスリングするメリット
キャスリングするメリットは、状況にもよりますが、主に以下の3つが挙げられます。
- キングの安全性を確保できる。
- ルークを攻撃的なポジションに配置できる
- 効率的な1手
キングの安全性を確保できる
チェスの基本的な考え方として、
- 盤面中央のキングは危険な位置
- 盤面端のキングは安全な位置
という点があります。
キャスリングをしていない初期位置にいるキングは、さまざまな駒から攻撃を受けやすい危険な位置です。
それに対して、キャスリング後のキングは、敵の駒から攻撃を受けづらく、敵の攻撃の狙いも読みやすいです。
ルークを攻撃的なポジションに配置できる
盤面端にいるルークは、他の駒と連携が取りづらく、あまり攻撃的なポジションではありません。
キャスリングをすることで、盤面端にいるルークを盤面中央の攻撃的なポジションに移動できます。
最終的には、キャスリングしていないルークと相互にカバーし合いながら、試合を進めていくこともあります。
「キャスリング後のルーク」と「キャスリングしていないルーク」が連携し合う
効率的な1手
キャスリングは、
- キングの安全性を確保できる。
- ルークを攻撃的なポジションに配置できる
という2つのメリットを1手で同時に行えます。
チェスにおいて、「効率的な1手」というのは非常に重要であり、キャスリングはまさに超効率的な1手です。
ほとんどのチェスプレイヤーはキャスリングでキングの安全を確保してから、攻撃のフェーズへと移ります。
キャスリングの罠・注意点
キャスリングすれば、「キングは絶対に安全!」というわけではありません。
例:キャスリング後、すぐにチェックメイト
上記の例のように、キャスリング後にすぐにチェックメイトされることが初心者同士の試合だと稀にあります。
「チェックメイト=キングは絶対安全」ではないので、キャスリング後もキングが安全かどうかを見極める必要があるでしょう。
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